国民投票法改正案

2018年の通常国会に、「日本国憲法の改正手続に関する法律の一部を改正する法律案」(国民投票法改正案)が提出されました。

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この法律案は、議員等の選挙に関して投票環境の向上のために2016年に改正された公職選挙法の内容を、憲法改正に関する国民投票にも導入すること等を内容としています。

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衆議院憲法審査会に付託されましたが、通常国会中には審議が行われなかったため、継続審査となりました。
秋に召集される予定の臨時国会での成立を目指してまいります。

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法律案の概要は、以下のとおりです。

日本国憲法の改正手続に関する法律の一部を改正する法律案の概要

1 投票人名簿等の縦覧制度の廃止及び閲覧制度の創設

<現行制度の問題点>
国民投票をするためには投票人名簿に記載されていなければならないため、名簿を投票人の目に触れさせることが必要となります。
そこで、現行法上は「縦覧」という制度が用意されていますが、憲法改正の発議が行われ、投票人名簿さ作成された場合、投票人の氏名、住所、生年月日といった個人情報が記載された縦覧用書面を、誰でも見ることができ、個人情報保護の観点から問題があります。

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<改正案>
従来の「縦覧」制度を廃止し、次のように閲覧できる場合を明確化、限定するなどした新たな「閲覧」制度を創設することになります。
・投票人名簿の抄本等の閲覧をできる事由を法律上明記すること。
→投票人が投票人名簿への登録の有無を確認するため、それに必要な限度に限り閲覧可能とする。
→公職選挙法で認められている政治活動目的や調査研究目的の閲覧は不可とする。
・閲覧を拒むに足りる相当な理由があると認められるときは、閲覧を拒むことができるものとすること。
・不正閲覧対策に関する措置(罰則や過料を含む。)を法律上規定すること。
→不正の手段による閲覧、目的外利用等を禁ずる。

2 「在外選挙人名簿」への登録の移転の制度(出国時申請)の創設に伴う国民投票の「在外投票人名簿」への登録についての規定の整備

<現行制度の問題点>
公職選挙法の改正により、出国時に市町村の窓口で在外選挙人名簿への登録の移転を申請できる制度(出国時申請)が新たに創設されました。
出国時申請後、国民投票の登録基準日(投票日の50日前)までに在外選挙人名簿に登録されれば、在外投票人名簿にも自動的に反映され、国民投票の在外投票を行うことができます。
しかし、登録基準日直前に出国した場合であって、在外選挙人名簿への登録が登録基準日以降となった場合、自動的には在外投票人名簿に反映されず、別に定める手続を行わないと在外投票等ができないという事態が生じる可能性があります。

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<改正案>
登録基準日までの間に、在外選挙人名簿への登録移転の申請をして出国した者で、その後在外選挙人名簿への登録移転が行われた者については、それが登録基準日後であっても、在外投票人名簿の登録もすることとなります。

在外投票人名簿登録移転制度(出国時申請)

3 共通投票所制度の創設

<現行制度の問題点>
投票の当日は、指定された投票区の投票所でしか投票できないこととなっており、指定された投票所が遠い等利便性が悪い等の問題がありました。

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<改正案>
投票の当日、市町村内のいずれの投票区に属する投票人も投票することができる共通投票所を設けることができる制度を創設することが可能となります。
これにより、駅構内やショッピングセンター、駐車場が充実した施設等の利便性の高い場所への共通投票所の設置が促進されます。

4 期日前投票関係

① 期日前投票事由の追加

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<現行制度の問題点>
期日前投票をすることができる事由に災害や悪天候が含まれておらず、投票日に悪天候である等の場合に投票に行くことができない等の事態が発生するおそれがあります。

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<改正案>
期日前投票事由に「天災又は悪天候により投票所に到達することが困難であること」を追加します。

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② 期日前投票所の投票時間の弾力的な設定

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<現行制度の問題点>
各市町村で期日前投票所を1つだけ設ける場合は、投票時間が8:30~20:00で固定されていました。
また、複数の期日前投票所を設ける場合でも、特定の1つは投票時間を必ず8:30~20:00とし、その他の期日前投票所は開始時刻の8:30からの繰下げ、終了時刻の20:00からの繰上げという、短縮しか認められておらず、地域の実情に応じた投票時間の柔軟な設定を行うことができません。

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<改正案>
期日前投票所を1つだけ設ける場合は、開始時刻(8:30)の2時間以内の繰上げ及び終了時刻(20:00)の2時間以内の繰下げを可能とすることが可能となります。
複数設ける場合は、8:30から20:00の間は必ずいずれかの期日前投票所が開いてさえいれば、それぞれの期日前投票所において、開始時刻の8:30からの繰下げ又は2時間以内の繰上げ、終了時刻の20:00からの繰上げ又は2時間以内の繰下げが可能となります。

  現行法 改正案
当該市町村に期日前投票所を1つ設置する場合 8:30~20:00で固定 8:30~20:00は必ず開き、その上で開始を最大2時間繰上げ、終了を最大2時間繰下げることが可能(延長のみ可能)
当該市町村に期日前投票所を複数設置する場合 特定の期日前投票所1か所は8:30~20:00で固定
他に期日前投票所については、8:30~20:00を短縮することのみ可能
8:30~20:00の間、少なくともいずれかが開いていれば、各期日前投票所における短縮又は最大2時間の延長(開始、終了とも)が可能
※例)をご覧ください

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期日前投票の投票時間の弾力的な設定

5 洋上投票の対象の拡大

<現行制度の問題点>
一定の船舶で外洋を航行中の船員について、ファクシミリ装置を用いて投票することができるようにする洋上投票制度では、以下の者が洋上投票を行うことができません。
①便宜置籍船(外航船舶運航事業を営む日本の事業者が使用する外国船籍の船舶)に乗っている船員
②投票者以外に2人以上の日本国民である船員が乗っていない場合(不在者投票管理者と立会人が必要であるため)
③実習を行うため航海する学生・生徒(船員ではないため)

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<改正案>
①便宜置籍船等の船員、②不在者投票管理者及び立会人が乗っていない船舶の船員、③実習を行うため航海する学生・生徒も洋上投票の対象とします。

6 繰延投票の期日の告示の期限の見直し

<現行制度の問題点>
天災等で投票を行うことができないとき又は一度投票所を開設して投票の手続を開始したものの更に投票を行う必要があるときに行う繰延投票の期日は、少なくとも5日前に告示を行わなければならず、早期に投票の結果を確定させるべきという要請に反しています。

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<改正案>
繰延投票は、少なくともその期日の2日前に告示するように改正します。

例)投票日の前日(例:1日(土))に投票日(例:2日(日))が悪天候になる等の理由により投票不能となることが確実となった場合、
現行制度:1日(土)に繰延投票の期日を告示した場合、6日(木)が繰延投票の期日の最短日
改正案:1日(土)に繰延投票の期日を告示した場合、3日(月)が繰延投票の期日の最短日

7 投票所に入ることができる子供の範囲の拡大

<現行制度の問題点>
選挙権年齢が18歳となりましたが、若年層の投票率が低いことが問題となっている中で、投票所に入ることができる子供の範囲を「幼児」に限っていることで、児童、生徒等に対する選挙等の啓発の機会を逸しているという見解もありました。

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<改正案>
投票人が同伴できる子供の範囲を「幼児」から「児童、生徒その他の18歳未満の者」に拡大します。
これにより、将来を担う子供たちが早い段階から社会の一員、主権者としての自覚を持ってもらうことで、将来の有権者への有効は啓発にも繋がると期待されています。

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