夏の東京オリ・パラ大会前の福島原発事故処理水の海洋放出決定には反対します!
『福島第一処理水放出決定 政府、通常国会前めざす』
日経新聞報道記事(2020年12月25日)
この報道が真実ならば、夏の東京オリンピック・パラリンピック競技大会前のこのタイミングで、日本政府が福島原発事故処理水(860兆ベクレル以上のトリチウム水と通常の原発排水には含まれない57核種の二次処理後残存核種)の太平洋への海洋放出決定に反対します。
自民党所属国会議員有志の会による
自民党福島第一原子力発電所処理水等政策勉強会
処理水に関する関係団体等の意見
この様な経緯があるにもかかわらず、2020年12月25日に『福島第一処理水放出決定 政府、通常国会前めざす』との日経新聞報道記事が出たことに驚きました。
東京電力から福島県漁連への約束文書
2011年3月11日に福島第一原子力発電所の事故が発生し、2015年8月25日に東京電力の廣瀬社長(当時)は、福島県漁業協同組合連合会に対し、「関係者の理解なしには、いかなる処分も行わず、多核種除去設備で処理した水は発電所敷地内のタンクに貯留いたします。」と文書で約束しています。
<東京電力からの福島県漁業協同組合連合会への回答>
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「ALPS処理水に関する意見募集について」
経済産業省の資料によると、ALPS処理水に関する意見募集を2020年4月6日から7月31日までの117日間実施し、4,011件の意見が寄せられ、以下のように、反対意見がその多数を占めています。
「我が国漁業者の総意として、絶対に反対である」(全漁連)
2020年10月、全国漁業協同組合連合会は、別紙のとおり漁業関係72団体を代表して、「漁業者・国民の理解を得られないアルプス処理水の海洋放出について、我が国漁業者の総意として、絶対に反対である。」という内容の海洋放出反対の要請書を、政府に提出をしています。
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【海洋放出反対の全国漁業関係72団体】
政府の福島原発事故処理水「海洋放出決定プロセス」について検証します
政府の専門家会議の判断基準は、下記のプロセスから明らかなように、国民のメリットである「風評被害の低減」よりも、東京電力側のメリット「デブリ取り出しの支障が減る」「廃炉作業の支障が減る」ことを優先させたものです。
「メリット」「デメリット」は、政府の専門家会議が、処分方法ごとに意見を集約し決定したものです。
政府の最終案は、専門家会議で決定した国民のメリット「風評被害の低減」よりも、「デブリ取り出しの支障が減る」「廃炉作業の支障が減る」という東京電力側のメリットを優先させたことが確認できます。
自民党処理水等政策勉強会は、政府の専門家会議が決定した「風評被害の低減」という国民側のメリットを優先する処分方法とその根拠を提言します。
東京電力の2つの主張を検証します
検証(1) 「汚染水が増え続け2022年にタンクがいっぱいになる」との主張
検証(2) 「タンクが廃炉作業に支障になる」との主張
まずは、経済産業省の資料『汚染水発生量の内訳』をご覧ください。
検証(1)「汚染水が増え続け2022年にタンクがいっぱいになる」との主張
上記、経済産業省の資料では、建屋への流入水の内訳は、地下水50㎥、雨水50㎥ですが、そのうち雨水50㎥は建屋の屋根カバーと建屋周辺の「防水加工の計画」を前倒しして実施すれば、限りなく0に近づけることが可能となっています。
建屋の流入水は、「防水加工の計画」を前倒しして実施するだけで、現在の日量140㎥から90㎥に削減でき、東京電力の「2022年夏タンク満杯論」が、その2年後の2024年夏以降までに延長できます。
したがって、政府があえて今の時期(2021年)に、「海洋放出」の判断をする必要はなくなります。
なお、政府の専門家会議は、「海洋放出」には「デメリット」として「更なる風評被害の恐れ」があることを認定しています。
東京電力の「2022年夏以降の海洋放出を実施する計画」では、その「海洋放出」の準備期間は2年間必要とするため、2020年夏には政府が判断することが必要とされていました。
しかし、国民の理解が得られないことにより、政府はその判断を今年(2021年)に持ち越しました。
東京電力の「2022年夏以降の海洋放出計画」は、2020年夏に政府が判断できなかったことにより、既に破綻しています。破綻していないと言うならば、それは元からずさんな計画であったことを意味します。
今やるべきことは、東京電力が現行の計画を変更し、前述した「防水加工の計画」を前倒しして実施することにより、2022年夏に政府が判断する計画に変更することです。
東京電力が「更なる風評被害の恐れ」のある「海洋放出」の決定を東京オリンピック・パラリンピック競技大会前に政府に迫っている現状に、怒りを感じます。
東京電力の「2022年夏以降の海洋放出計画」は変更ができるのに、それを確認することなく、夏の東京オリンピック・パラリンピック競技大会前に政府が海洋放出決定の判断をすることには、反対です。
凍土壁があるにも関わらず、建屋に、地下水が日量50㎥も流入しているのが現状です。
その地下水50㎥の流入を防ぐためには、「凍土壁とは別に建屋周辺に止水板を設置することが、一番の止水対策だ」と各分野の専門家が指摘しています。
原子力規制庁も、「建屋内滞留水(汚染水)を外部に漏れ出させないために外部の水位を高く調整しているが、建屋周辺を遮水することにより、原子炉建屋の壁部等の止水による閉ループの完全循環冷却を確立することができる」との見解を示しています。
建屋周辺の遮水対策と高濃度の建屋内滞留水(汚染水)の処理については、既に各分野の専門家から解決策の提案をいただいていますので、来年度の予算で広く公募し、オープンな形で速やかに解決策を出すべきだと、経済産業省に提言しています。
検証(2)「タンクが廃炉作業に支障になる」との主張
東京電力の資料には、「一度に大量に放出せず、年間トリチウム放出量は、既存の原子力施設を参考とし、廃止措置に要する30~40年の期間を有効に活用する」(2020年3月24日)と記載されています。
これは、全国の既存の原子力施設は、年間のトリチウム放出量が、施設ごとに「保安規定」で定められているからです。
仮に海洋放出をしたところで、処理水のタンク全1,043基(国会図書館資料)を単純に40年(東京電力資料)で割ると、年間26基が減るに過ぎないことになります。
かねてからの東京電力の「海洋放出しなければ、タンクが邪魔になり、廃炉作業に支障がでる」との主張は、矛盾が明らかになり、既に破綻しています。
各分野の専門家により、その点が指摘されております。
更に日本を代表する専門分野の企業からも、「既存のフランジタンクは耐久20年(国会図書館調べ)なので、それに替えて埋設保管できる低コスト・長寿命(100年)の超高強度繊維補強資材(国土交通省も採用している新技術)を利用した貯水ボックスを敷地内北側のガレキエリアに埋設すれば、廃炉作業に支障があると東京電力が主張するタンクエリアの1,043基を、速やかに一斉に撤去でき、撤去したタンクエリアの跡地に廃炉事業関連施設を集約させることができる」との提案をいただいています。
更にこの提案の利点は、廃炉完了予定の2051年まで処理水を保管すれば、トリチウム水(約860兆ベクレル)は半減期(約12年)により、1/4(約215兆ベクレル)以下まで自然減少することとなり、風評被害もかなり低減できることとなります。
廃炉完了後の「2051年1Fビジョン」も検討します
福島第一原子力発電所の敷地面積は、350万㎡(東京ドーム約70個分)あります。
政府は、2051年までの廃炉完了を計画していますが、廃炉完了後の2051年ビジョンも明らかにしていく必要があります。
何故ならば、政府が世界に向けて表明した「2050年温暖化ガス排出量実質ゼロという目標」を実現するためには、昨年末、政府が決定した復興庁の「福島浜通り地域の国際教育研究拠点に関する有識者会議」の提言も当然含まれることになり、廃炉完了後の2051年に「2050年温暖化ガス排出量実質ゼロ目標」の成果物を福島に集約し、福島第一原子力発電所の敷地も活用した、人材・技術で世界に貢献できる「2051年1Fビジョン」等、福島県民の皆様に夢を抱いていただく政策も必要だからです。
我々としては、全漁連をはじめ多くの国民の皆様の目線で提言し、実現して参ります。